コンサルタントの眼

第19回 お約束を守れるようにする仕組み-1

~ スケジュールToDoリスト・ルール ~

by 石川 恵美


 前回の更新から、早いもので2度、向日葵が美しい季節がすぎてしまいました。コロナ禍の影響を受けていらっしゃる方々に心から"Well being"を心から祈念し、そして、新しい時代が求める「人、組織としてのあり方」を検討模索しております。
当初、今回は、”お約束を守らないお人への対応の詳細実践と過去の例-1”を予定しており、ご紹介内容は、対面やリアル会議を基にしている実践履歴を計画しておりましたが、”対面やリアル会議を基に”した実例では今後の参考にならないですので、”テレワーク体制+オンライン会議管理”の一部をご紹介することにいたしました。

2020年6月より弊社もテレワーク体制導入、かつ出勤スケジュールは一般管理職 と現場スタッフが face to face にならぬよう、極力対面を回避し、また東北サテライトオフィスを一時的稼働ではなく、ほぼ定常スタイルとして稼働することとになり、「組織運営の平常」が全く変わってまいりました。そのためのルールも、過去のものから徐々に刷新を余儀なくされています。

以前は、プロジェクトを主体にした管理ツールにてスケジュールし、ショート・ミーティング、スタンダップ・ミーティング実施によって、各担当者の顔色や体調の変化もキャッチすることができていました。しかしながら、テレワーク体制+オンライン会議化すること数ヶ月、遠隔地運営にて発生するネットワークや開発環境問題、その他担当者のプライベート問題も関わってくると、管理ベースは個人作業まてブレイクダウンして明確にしておかないと、運営に支障をもたらす要因を見逃すことに気が付きました。これまで対面で実施してきたよりも、はるかに具体的に、毎日の業務の中味を見ることを重要視する方向性になり、「欲しいものを明確にする」「成果を分かりやすく表現する」=協力者達に伝えきるスキルが双方に必要ですね。15年前に本当に実会議で出席者全員が目を丸くした発言がありました、「アレのアレはアレですよね」会話本人同士は、以心伝心でご満悦のようでしたが…
さすがこれは、テレワーク体制では厳禁。

作業に必要な環境や情報を全部提供できているか?認識しているか?作業計画は、完了までの工程情報は紐つけられているか?
すなわち、これを担当者視点で管理することが「約束が守られるように予定する=お約束を守れるようにする仕組み」になっていったのです。

アトリエ イシカワが徹底している”お約束を守れるようにする仕組み=指示内容”は、
各担当者毎の「スケジュールToDoリスト掲載方法のルール付」です。
スケジュールToDoリストとは、各担当者が毎月毎のファイルに、予定と実績を書き込むファイルです。アトリエ イシカワは、スケジュールToDoリスト・ルールを実践して10年になりますが、テレワーク体制でこれほど有効に使えるルールだとは、気がついていませんでした。

例えば、「次の会議の日程が決まった」とします。
これまでは、毎日のショート・ミーティング、スタンダップ・ミーティングで、確認してきたのは、
「会議日程記入」 → 「会議アジェンダ送付予定日記入」、「議事録作成、承認、送付予定日記入」程度の粒度でした。つまり、会議アジェンダは、チームで承認が必要ですので、送付前日に、対面で確認承認を取ることがルールでしたが、とりわけ、細かくスケジュールToDoリストには掲載しなくても、ショート・ミーティング、スタンダップ・ミーティングで伝えることで、チームリーダーの承認プロセスに回っていました。しかしながら、ショート・ミーティング、スタンダップ・ミーティングもオンライン会議になってからは、作業内容を細かくスケジュールToDoリストに掲載するように変更しました。

まず、「次の会議の日程が決まった」ならば、
①会議日日程を記入(後日、会議用サイトのリンクを記入する)
これは、通常どの組織でもカレンダーに記載して関係者の方々の共通認識になっていますでしょう。

次に、アジェンダ送付が必要ですから、
②会議アジェンダ送付予定日承認が必要な場合、この日の午前に承認予定等、を記入 します。
申請者のスケジュールToDoリストにも、承認者のスケジュールToDoリストにも掲載します。

で、次に、アジェンダ作るには、前回の会議のアクションリストや、これまでの宿題をリストアップし、実際に作業を実施しなくてはいけないですから、それを実施する期間に以下を記入します。
例えば、
③会議アジェンダ内容の作業予定期間
 前回の会議 x/xx アクションリスト1)「xxxx検討資料まとめ作成」 
 3日必要であるならば、該当する日程に、それぞれを記載します。
 作業実施後、最後の完成予定日に、「完了予定」を記載します。実績として完了したなら、「完了」とします。

④会議アジェンダ内容の作業実施内容の記載
ここで、その日に作業した成果を保存したサーバーのリンク先、ファイル名称を記載します。3日間作業したら、その日毎に別ファイルに保存し、3日でどのように進化したか?履歴を追えるようにしています。これがとても重要!何故なら、途中で検討方向、表現方法などの変更を余儀なくされた場合、修正が行いやすいからなのです。例えば、3日目の成果であるレポートに記載された表現が間違っていたら、2日までの実績から、表現変更を整えて指示を出せますが、同一ファイルを上書き更新し続けていくと、内容修正に時間を取られてしまい、非効率的になり、関係者のモチベーションも低下するからなのです。ここを各個人管理に任せてしまうと、粒度がバラバラになるので、チームのルールを徹底したほうが効率的です。
実験や解析条件毎等の作業の切れ目毎に、ファイル名変えて、サーバーへ保存する習慣を付けておくと、作業や実験の流れを追跡しやすくなるので、途中で計画や条件変更の際に、どこから変更していけばよいか? わかりやすくなるのです。
また、こまめに成果物ファイル名称と条件関連性を記載しておくと、どれだけ作業負荷が大きかったか?を管理職に説得する際にも説得力があり、自信がつき、気が楽になります。管理職側も、一目でその日に何を作業していたか?理解しやすいと、眉間に皺を寄せなくなります。
当初は、面倒くさいと感じている人たちも、確実に毎日の成果が可視化されて積み上げられていくと、会議前のチームのピリピリした緊張がネガティブになりませんし、むしろ、「本作業の成果に関しては、どこからでもかかっていらっしゃい、経緯を全部説明できます!」的なポジティブ・オーラをまとい始めます。チームには、このポジティブ・オーラが本当に大切なのです。

⑤会議の実施、議事録
時間内の議事録だけでなく、プレゼンテーションに使用した作業ファイルの一式のショートカットも議事録保存場所と同様、重要な情報です。後で、アクションリストを実施する際に、参照する資料がみつからない、という事が発生しないように、会議の書記さんには負荷がかかりますが、スケジュールToDoリストには、議事録のみならず、参照する資料または、リンク先を必ず記載して、まとめてもらいます。ここがやはり大切です。

⑥会議議事録送付予定日記入
議事録の承認プロセスが必要な場合、②のように申請者、承認者のスケジュールToDoリストに掲載します。実際に送付したら、議事録が保存されているサーバーのリンク先、ファイル名称を記載します。

⑦次のアクションリストの割り振りと実施予定を記入
 実際の作業内容の各担当者への割り振りと実施予定をスケジュールToDoリストに掲載します。
 ④と同じで、できるだけ細かく計画、予定、実績履歴を記載し、サーバーに保存します。この履歴は、後で経緯を追跡し、検証できるのでとても便利です。

そして、上記の記載内容の実施というルール徹底は絶対!です。アトリエ イシカワでは、これを違反すると、イエローカード(5枚でプロジェクト退場)になります。これを細かく記載し、実施するようになって気が付いたことは、作業者が「あれ?こんなに作業時間かかるなら、ちょっとピッチあげないとまずいかも…」と認識したり、管理者が「え?作業が1人に偏りすぎているな、分散しないと間に合わないかも…」という懸念が早期に明確になったり、対処が早めに講じられるのでトラブル発生を回避できるようになったことです。
また、無謀な計画も洗い出されます、例えば文章のみで記載された”5つの種類の計測データに対して4つの補正パラメータ有効無効設定の組み合わせの補正結果をビジュアル化”が担当者1名で2時間しかとられていなかった場合、それは無茶でしょう!1件あたり数分しか、割り当てられないのですから。
無謀な計画を重ねると、遅れが意識のずれ、責任の所在のたらいまわしになりますから、避けたいですね。これを放置すると、部下や協力企業のスタッフのメンタル、間違いなく壊れます。

「お約束を守らない人」には、必ず前兆、理由があるのです。
締め切りからさかのぼってスケジュールToDoリスト に記載していないという事は、作業の予定や自覚がないという兆し、これを見逃さないようにしたいのです。

約束が守れなかった ← 予定通り終わらなかった ← 作業量を見誤った 
 ← 計画立てるのが遅すぎた ← 承認者に伝えてなかった 
  ← 資料を探したがどこにあるのかわからなかった ← 議事録みてなかった 
    ← 議事録どこにあるかわからなかった

これらの要因は、従来では、ショート・ミーティング、スタンダップ・ミーティングで抑え込んでいましたので、テレワーク体制導入は最初不安でしたが、この新しい細かいルール作りによって、関係者の顔色を明るく爽やかにしました。何故なら、予定と履歴を同時記載することで、「どれだけ作業負荷が大きかったか? この計画は負荷が大きいのでは?」を管理職に説得しやすくなり、管理職側も、「一目でその日に何を作業していたか?」追跡理解しやすくなったため、トラブルの悪い兆しをできるだけ早期に検出し、発生頻度を落とし、本来のSEの持っているポテンシャルを最大限に活かせる明るい兆しになったのです。
全部、つながっているのです。それを丁寧に実施する計画を可視化していく。
担当者と管理職お互いに、眉間に皺を寄せなくなり、自信がつき、気が楽になっていくので、他の組織にも推奨しています。(株)アトリエ イシカワでは、他社と協業を繰り返し、こうしたルールを定義してレールを作ることで、エンジニアの能力を活かせる仕組みを作る事ができていくのを目の当たりにしてきました。

業務指示を具体的に出せず、成果を評価できず、SEを常駐させて対面でいることで安心感をすり替えている組織や、ルールがない組織では、残念な結果が発生すると、責任のなすりつけ合いに発展し、本来の業務の目的=本来の”商い”の流れから外れていきます。本来の”商い”の流れから外れていくと、経営は成り立ちませんよね。

プロジェクト管理の現場の原則は、大自然の摂理と重なります。
権力で押さえつけて、あたかも統括管理できているように見せかけても、実は崩壊は簡単に始まります。人の心には命令できないものなのですから。

そして今、時代は恐ろしいスピードで変化しています。
多様性の時代に確実に入ってきており、いろいろなことがこれまでの常識、正常、通常、平常 とは異なり始めたゆえ、他者多様性を認め合う時代の加速に、ふわりと順応していくこと、それが大切だと実感しています。

次回は、スケジュールToDoリスト と同様に推奨している「気をつけるリスト」または、「担当者裏ログ」のご紹介を予定しています。最後までお読みいただきありがとうございました。

2020/09/09


石川 恵美
    国内精密制御装置メーカ勤務後、1994年アトリエ イシカワを設立。
    専門は、半導体製造装置、検査装置、製造管理システム。
    アトリエ イシカワ代表取締役 装置プロデューサー/生産ラインコンサルタント