コンサルタントの眼

第13回 ”充足感”を重視しすぎの「8割君」

~ リスク回避の様子見 ~

by 石川 恵美


(株)アトリエ イシカワでは、常に目標を2割増しに据えて頑張るタイプのガムシャラ君を、「2割増し君」と呼んでいる。
そしてその反対に、充足感や納得感を重視し、四角い部屋を丸く掃くとこまでで止める君を「8割君」と呼んでいる。
どちらも管理職泣かせであるが、昨今の「8割君」が発生しやすい苗床条件がわかってきました。

ハイレベルのメンバーが集まっているのに、殆どのメンバーがディフェンス陣形をとり、つまり、誰かがトリガーを掛けることを待っている状態。これでは何も始まらない…
でも、それには、彼らなりの理由があるのです。

①ゴールはわかっていても、計画自体が無理っぽくて、どうなの?って感じ。
 実現性が低いからモチベーションが上がらないし、ちょっと様子見…
②壁画の制作に例えたら、塗り絵の枠や、デザイン、色の指示がないから、塗っていて不安。
 全員で塗り出してもやり直しや無駄が多そうだなぁ、不安。
③立案を促されても、何がゴールか?不明瞭。
 それに、同時に2つも3つもできないよぉ、今のミッションが終わってからにしたいなぁ。

つまり、確実に勝てる試合ではないから、土俵にあがりたくはない、リスク回避の様子見なのです。
人間は、そもそも誉められたい本能があります、それは他人からだけでなく、自分で自分を「よくやった!」と誉める環境を整えたいのです。
しかしながら、上記の①②③ ともに、他人からも自分からも結果的に誉めてもらえる可能性が格段に低い。 なので、控えに回っていては、実力は発揮できないにも関わらず、勝てない試合では、控え気味にできるだけベンチで、という立場を選択するのです。

そもそも、組織では、 2:6:2 の法則 と言って、2割が組織を引っ張り、2割が落ちこぼれながら付いてくる。 つまり、「2割増し君」と「8割君」が同量で打ち消しあって、平均化されていたことになり、これでなんとか組織は存続可能でした、いにしえの頃より、「8割君」は存在しているのです。
しかし昨今、「2割増し君」が稀少になり、「8割君」が増殖してきた、それは、すなわち稼ぐ力が低下していくことにつながり、これが、組織が徐々に溶解していく流れなのです。
恐ろしいのは、ここに「本当にこれでいいの?」という信号がたたないことです、だって、回りがそうだから、あえて目立たないほうがいい。 目立たないほうが無難ということで、「8割君」がたくさん育ちますが、組織の稼ぐ力が確固たるのであれば、「まだまだ大丈夫」と、憂う必要はないかもしれません。

ですが、ここに落とし穴があります。
「8割君」は、徐々に実力能力が、累積して8割化していくのです。
つまり、今100%の実力を80%までしか発揮しないでいると、その80%が自分の100%になってしまい、さらに80%化していくことを続けていくのです。
5年ごとに、80%化していくとどうなるでしょうか?
1年目 100%の実力 → 6年後x80% 
  →11年後x80% →16年後x80% 
        →20年後x80% ≒ 約40%
20年経過すると、実力=思考能力、技術力、論理力、行動力、情報収集力などは、半減します。
自分の評価力そのものが80%になってしまい、それは、実は自分の知らないうちに蔓延る病のように浸潤していきます。「今あえて●●しなくていい」という理由づけをしてきた人たちの20年後は、冷静な判断はおろか、他人と自分の違いを評価できなくなっていき、被害者意識が増大します。

逆に「2割増し君」は、どうなるでしょうか? 同じように5年ごとに、120%化していくと
1年目 100%の実力 → 6年後x120% 
  →11年後x120% →16年後x120% 
        →20年後x120% ≒ 約200%
失敗してもその分、知識と技術に発展します。本人の実力が倍増するだけでなく、更にこの技術を周囲に伝達できるようになると、組織力として向上します。

で、大切なのは、どうしたら、「8割君」を増やさずに組織を運営するか? です。
成功の条件を明確に伝えてあげて、実践すべき塗り絵の枠をきちんとわかりやすくする。
そして達成したら人前で誉めてあげる、ことなのです。
⑴:誉める条件を明白にする
  目的を達成したら、「よくやった!これは使いやすい!」という誉め言葉でOKです。
  ひとつ、大事なこと。立案だけで、誉めちゃダメよ、誉めるのは実践してから!
  (これには深い理由があります)
⑵:NGな場合には、理由を明白にする
  条件が悪かったのか?進め方が悪かったのか?評価方法が悪かったのか? 
  間違えてる! と思ったら、すぐ引き返させる、訂正させる、止めさせることも重要です。
  一番大切なのは、「何が失敗で、どうしたら今後の再発を防止できるか?」が明確であること、
  誰が悪いか?ではなくて、原因は何?、それを組織で共有する力です。
⑶:実績を履歴に記す
  日々、何をしたか?履歴に、自分のやった感を残しましょう。
  例えば、作業報告などの記録(日時、作業フォルダ、ファイル名等、作業内容の記録)に、
  かなり頑張った感=自分の達成感の◎印をつけます。

数か月前の作業内容なんて誰も覚えていません。 でも、履歴を振り返り、作業内容の中に◎がついていたら、その日その時は、かなり頑張ったと「自分で自分を誉める」!
また、上司、管理職として、部下の履歴にこの◎を目にした時、そっとその作業内容をチェックしてみてあげてください。 (この時、どこにそれがあるのか、分かりやすくするため、フォルダパス、ファイル名、チケット名が必要なのです) そして、後日立ち話の時にでも、
「ああ、そういえば、あの資料、評判よかったよ」 と。

「8割君」、実は誉められたいのです、それを誘導すると、組織の力も向上します。
そこで、もう一方の「2割増し君」のコントロールも必要です。 何故なら、頑張っているのに、「2割増し君」は意外にも、8割性能しか出ない場合が往々にしてあるからです。 表面だけしか見ていないと、「2割増し君」を「8割君」と誤認する可能性があり、組織の可能性を潰してしまうのです。

という訳で、次回のコンサルタントの眼は、「第14回 ”2割増し君”進化の実例に使ったルール等(仮題)」を掲載します。(たぶん、樹々に葉っぱが生い茂る頃)

2018/1/11


石川 恵美
    国内精密制御装置メーカ勤務後、1994年アトリエ イシカワを設立。
    専門は、半導体製造装置、検査装置、製造管理システム。
    アトリエ イシカワ代表取締役 装置プロデューサー/生産ラインコンサルタント

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