コンサルタントの眼

第14回 2割増し君との仕事

~ アトリエが努力しているチェックポイント ~

by 石川 恵美


(株)アトリエ イシカワでは、充足感や納得感を重視し、四角い部屋を丸く掃く君を「8割君」と呼び、反して常に目標を2割増しに据えて頑張るタイプのガムシャラ君を、「2割増し君」と呼んでいます。
この「2割増し君」、スイートスポットに当たれば、満塁ホームラン王なのだが、頑張っているのに意外にも8割性能しか出てないように見受けられるケースが往々にしてあり、 表面だけしか見ていないと、「2割増し君」を「8割君」と誤認する危険性があるのです。 つまり対処を間違えると組織の可能性を潰してしまうので、「あーん、もう!どうしてこうなるの~?」と管理職泣かせ。

例えば、プロジェクトのテスト進捗は、テスト完了数/テスト項目数=進捗率% で表現すると比較的管理しやすいため導入している組織は多いと思いますが、テスト期間終盤に差し掛かって、その肝心の進捗率%が85%から上がらなくなってくることが多々あります。 テスト手順構築の際に難易度の高いテスト項目を後回しにしているためでもありますが、表面の数値しかみていないと、実は大切なことを見落としてしまいます。

当初、予定テスト項目数=1000件だとして、ある日の進捗がテスト完了数=850件で、進捗率85%達成、あと少しだ!と思って、追い込みをかけて暫くしても、進捗率が上がってこない、「何故だ?!」
テストすればするほど、明文化しておかなくてはいけない細かな機能仕様がでてきて、「2割増し君」プロジェクトは、それらを手寧に押さえていったら、当初の予定テスト項目数を超えて、1200件に増加している…つまり、テスト完了数=1000件を超えてテストは進歩しているが、分母のテスト項目数が1200件なので、見た目の進捗率=83% に低下しているのです。
「山は登れば、また次の峰が見える」… 
このままやらせておくと、終わらないかも!?
こんな風、そういう風に「2割増し君」プロジェクトは、進捗85%からが上手くいかないことが多いのです。

でも、プロジェクトの士気もあがっていてチームの誰もが品質向上のために尽力している。進捗は後退しているが、ソフトウェアの品質は向上している。
ここが、四角い部屋を丸く掃く「8割君」とは、大きな違いなのです。
違いを見落とすと、せっかくの成功間近なプロジェクトの活き活きとした芽をつぶしてしまう。
進捗率の数値しか見ていないと、この違いは判らないのです。

対処の方法も真逆。
・自律的に進化している「2割増し君」に、無用なケツ叩きはモチベーションを下げるのみ。
 的確なサジェスチョンを!
・逆に、四角い部屋を丸く掃く「8割君」には、てこ入れが必須。
 でも、これを続けていると「最後に誰かが助けてくれる」甘えが増殖。
 アトリエも過去に失敗している…

そこで、的確なサジェスチョンのためのアトリエが努力しているチェックポイントは、こちら↓。
①タイミング
 上の例でいえば、テスト項目増やす時点で、進捗管理の条件が変更になるので、管理職に報告。
②方向性
 テスト項目増やす必要性の理由、特に方向性の裏付けの明文化。
 品質向上が収束する方向性を目標。
③量
 作業量が激増するような方向性は、元々の要求仕様、機能仕様に立ち返るべし。
 品質向上作業が収束する方向性を鑑みて、作業量の適正化を見出す。

虫歯とバグは自然治癒しません。どんなプロジェクトでも、この2つを無視すると、後で後悔します。 やはり、チェックポイントを巡視していると酷い状況になる前に気が付くもので、やはり無理なく「良い習慣を重ねて続けること」が早道のようです。 以下、アトリエの参考書著より抜粋。

   些細なことでも不安要素の根源を取り除いておく事は、開発の絶対的条件
   最良の結果は、最善の経過によってもたらされる
   ~ IOMT 岩谷昭一氏、増村均氏 「老爺心のふた言三言
              《より良い技術者生活へのヒント》」~

そして、最後に①~③ともに、チームスタッフの協力なしには実施できません、プロジェクトの目標、方向性を理解してくれるスタッフの合意=④チームワークがとても重要なのですが、「2割増し君」のプロジェクトは、「勝手にルビコン川渡って行っちゃって…」の頻度が実は高い。
これをスルーすると、プロジェクトは収束しても、組織のチーム力が希薄になる危険性をはらんでいます。
「8割君」からすると、出来具合=進捗率は自分と同等か、それ以下と思っていた輩が、いつの間にかルビコン川渡っている、あーれー…

という訳で、次回のコンサルタントの眼は、「第15回 勝手にルビコン川渡るな!(仮題)」を掲載します。(たぶん、樹々の葉っぱが落ちている頃)

2018/8/18


石川 恵美
    国内精密制御装置メーカ勤務後、1994年アトリエ イシカワを設立。
    専門は、半導体製造装置、検査装置、製造管理システム。
    アトリエ イシカワ代表取締役 装置プロデューサー/生産ラインコンサルタント

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