コンサルタントの眼

第15回 勝手にルビコン川渡るな!

~ 大志を以て、感情と小欲を制す ~

by 石川 恵美


ルビコン川というと、命をかけ、もう後には戻れない決断。
ここでいう”決断”とは、スケールが違いすぎますが、ビジネスも一歩間違えると元に戻れない、と言う点で例えにさせて頂きました。

先の「第14回 2割増し君」で、テスト終盤に突如(追加検査項目が増加して)ゴールが遠くなる例を掲載しましたが、そのほとんどが、現場が良かれと思って選択した道であります。しかしながら、それがプロジェクトの収束ではなく、発散につながり、メンバーに対して予測や計画以上に負荷がかかってしまう…

「今、本当にそれが必要か?その実現性、成功率は高いのか?」
今一つ冷静になって、検討したかどうか? 検討が十分か? その選択で後悔しないか?
それには、「正しい現時点の情報」と「豊かな経験知」と「未来を予測する判断力」が必要ですが、メンバーそれぞれの考え方は千差万別ですから、意見が一致することは稀です。

例えば、テスト終盤に機能や項目が増えるのはエラー処理。
しまった、リカバーする手段が… 状況把握する手段が… 回避することができるか…
最低でも入れておかなくては、いけない、いや、たぶん指摘されるだろう、それは避けたいな。
だって、僕たちもエンジニアとしてのプライドあるから、納入後に「なんでこれ、できてないの?」とは、言われたくないし…

そして、スケジュールの見合う限りの対処項目を追加で入れてしまうのです。
どのくらいかと言うと、このくらい…???↓
機能が20項目あって、それぞれの画面やシーケンスが10種類あったとすると、出来る限りのエラー回復処理を入れようと思ったら、200[項目x種類]の中身を精査しなくてはならなくなります。 実装が収束してテスト期間に入って、疲労度も高まっているタイミングで、この精査を的確に実施するのは至難の業ではないでしょうか?
登山で行ったら、下山しなくてはいけない時間帯に入っても、まだ登頂アタックしている状態?
でも、上しかみていないと冷静になれないものです。少し、第三者的にみれるアドバイザーが判断に加わってくれると良いのですが。

(株)アトリエ イシカワでは、追加で実施したい項目を精査する際に、判断のタイミングで、感情と小欲にとらわれていないか?考えることにしました。
この図は、猪突猛進のガムシャラ君が、頭上の大志を掲げて、走る図ですが、感情と小欲にも囚われて走ってしまう危険性があることを現しています。



プロジェクトの大志はとても大切です、クライアントの要望の最優先に良い製品を世に送り出す。関係者全員の目標です。

「何故、これを修正、追加しなくてはいけないのか?」の問いかけに対し、
・このやり方が気に喰わないから、すっきりしない(論理的ではなくて、感覚、感情が先走っている)
・もうちょっと頑張れば、予想以上のことができて「すごい!」と言ってもらえる!(自己顕示欲)
感情と小欲で、猛進することもできますが、それに囚われすぎると、現実的に完結させるのは、大変なこと。


気持ちや気負いだけでは、川を渡り切ることは難しいでしょう。なので、気を制御する力量が重要なのです。
「大志を以て、感情と小欲を制す」(2019/2月の標語)

納期優先と指示されているのに、品質重視でスケジュールを守らないのは、契約違反になります。
品質重視と指示されているのに、十分なテストや検証を実施しなかったら、検収があがりません。
コスト重視と指示されているのに、高い部材を採用し続けたら、ビジネスとして成立しません。

短時間にその選択、判断をすることは、エンジニアやプロジェクト・リーダーにとって、非常にストレスになります。 「あー、もう面倒くさいから、全部やらなーい!」にするか、やっぱり試練の道を選択するか?  そして更に「やっぱり、やらなければよかったのに」と、後日指摘されることも多々あります。これが一番つらい! みんなに迷惑かけたと後悔してしまったり、人間不信になってしまったり、また同じことをやってしまうのでは?と自信喪失、いろいろいろいろ考えてしまって眠れなくなってしまったり、人間は簡単に割り切ることが出来ないものです。

でも、ここで、”心が折れない秘訣”あります。 くじけてしまってからでは、立て直しが難しい!だから、予防接種が必要なのです。

という訳で、次回のコンサルタントの眼は、「第16回 心が折れない秘訣(仮題)」を掲載します。(たぶん、バジルが美味しくなる頃)

2019/2/8
石川 恵美
    国内精密制御装置メーカ勤務後、1994年アトリエ イシカワを設立。
    専門は、半導体製造装置、検査装置、製造管理システム。
    アトリエ イシカワ代表取締役 装置プロデューサー/生産ラインコンサルタント

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