コンサルタントの眼
第3回「"事実を報告しない"と"嘘"の境界 」by 果田 理奈
「あなたは、部下の嘘をどこまで見抜けますか?」
人は、自分に都合の悪いことは、上司に報告しないものである。
それは、不都合な真実を抜いただけで、嘘ではない。だから、本人に罪の意識はない。
ただ、一連の事実と違う点においては、両者共通である。
「話が違うじゃないか!」と責め立てても、たいていがロクでもない結果に終わる。
「言ったはず」「聞いていない」「報告するつもりだったが時間がなかった」「俺は知らない」などの責任回避の負のスパイラル。
「それって、人としてどうなのよ?!」とチームワークの崩壊。
「一体なんのために一生懸命やってきたのか?!」という管理職の悲痛な叫び。
事実と異なる情報による経営判断ミスの連鎖。
組織の団結力や信頼感を一瞬のうちに、根こそぎ台無しにしてくれる。
「本当のところは、一体どうなっているんだ?!」
そんな状況になって、追及したところで、誰も本当のことなど冷静に認識できるはずがない。 問題の傾向を把握することで、再発を防ぐ手段を見つけることこそ望ましい。
では、どうやって?
実はちょっと面倒だけれど、カード式で整理することをお薦めしている。 関係者全員に「認識している事実」と「推測/意見」をヒヤリングして、その内容を1項目ずつカードにしておくのだ。
事実と推測を別々に、時系列にならべ、後から出てきた事実は、カードの色を変える。ちょっと客観的になれる。
同じことを何度かヒヤリングする。たいてい3回くらいまで繰り返す。
浮かび上がった事実の中から、都合の悪い情報をほんのちょっと入れて、再度聞くと、報告内容が変化する事がある。ここで怒っちゃ駄目。
最初の報告と異なってきた部分については、やはりカードの色を変えて、並べてみる。
これは少々面倒であるが、どの部署がどんな事にフォーカスしていなかったか?
ボトルネックは何だったか? 都合の悪い事実を報告しない傾向があるのは、どこ?それは何故?
こうして、"事実を報告しない"と"嘘"の境界が浮かび上がってくる。嘘の場合には、事実をすり替えていくので、カードの色が段々変っていくのだから。
だが、組織運営を存続させる場合、必要なのは原因と責任の所在を究明して総括(処罰)することでは断じてない!
大切なのは、それらの情報から改善策を見出すことである。
つまり、プロジェクト・マネジメント上の補正ファクターの定性定量を定義し、導入すること。
そして、もうひとつ重要なこと。
この補正ファクター導入後、努力する技術者の向上心が尊重されるかどうか、再度確認したい。
向上心が存在しないところには魅力的な成果は発生しない。 それは、業界にとっても会社にとっても負のスパイラルになってしまう。
産業の興隆は、向上を願って努力する技術者の意思群をそのものを反映しているのだ。
ゆえに、真の技術者でいることは、真の求道者であることと、一致していると言えよう。
2011/01/10
果田 理奈
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国内光学メーカ勤務後、システム開発現場にて在宅マネジメント体制を確立。
プロジェクトマネジメント/コンサルティング分野にて、企業の戦略を提案することが得意。
アトリエ イシカワ コンサルタント