コンサルタントの眼
第20回 人間性の回復のために
~ 担当者裏ログのススメ ~
by 石川 恵美
時代の流れが確実に変わった2019年から3年。さらに今年の時の流れは、これまでにない乱気流のように日々の営みに変化をもたらしてきていますね。
変化の速さの中で、月ごとに、起動修正を余儀なくされていく現実で、前回の本記事に記載した「スケジュールToDoリスト」の必要性をひしひしと感じてきました。テレワーク体制では、特に。
前回の記事の感想は、「あまりに当たり前」~「面倒くさくて、なんのメリットがあるの?」と、実はかなり両極端。
「あまりに当たり前」と思われる方々は、記録習慣が全体社風に沁み込んでいて、「記録?当たり前でしょ、それがどうしたの?」 と言う印象でしょう。
そうなんです、そして、これが未来の自分、会社を築き上げていくことも熟知していらっしゃる、
10年以上経過すると、「記録を細かくつけておいて、よかった!」と、さらに実感が倍増してきます。
10年20年続けていくことで、その先に必ずひたひたと押し寄せてくる老化=記憶の落とし穴をうまくくぐり抜けていけるのです。
で、今回お薦めするのは、この①「ToDo」リストに”付随する”データの記録。通称、担当者裏ログ
プライバシーに関することも含まれるため義務ではなく、何か問題があった時に、本人の自己分析の内容として有効な情報であり、本人の理解と許諾があれば開示してほしい、と始めたものです。
開示してもらった際には、会社側、管理者側とともに原因を解析して、対処を迅速に検討、お互いに解決のための”共通の意図”を作り出すことができて、この”共通の意図”が次なるステップの足固めになるのです。これはとっても大切なことです。
そのために、少々面倒な付随データとは、①を細かい「ToDo」記録(19回の記事参照)とすると、
②ヘルスケア・データ ③心のデータこれらを時系列で可視化、です。
諸事情あって会社側への許諾ができない場合でも、個人で省みると有効な情報なので、記録を続けてほしいデータで、10年以上のビッグデータ解析によって、あぶりだされてきた結論なのです。
②ヘルスケア・データ
例えば、体温、せきや頭痛の有無は、コロナ対策のために、共通の認識になりました。
加えて、起床時間、食事時間と内容、就寝時間、体組成データ、睡眠度合・サイクル、健康診断結果、1日のトイレの回数・排泄量と摂水量(CR作業者は特に必須)、勤務時間と作業環境などの記録はヘルスケア・アプリでも可能となって便利ですから使わない手はありません。
視点としては、今現状をチェックするだけでなく、過去のデータをビッグデータの解析として利用する、という点です。
③心のデータ
直感のアラームが鳴った時、または解決の糸口が見つかった時、そのインスピレーションを記録していますか?
「いやー、そうは感じたけど、実際一人ではできないから。」「現実的じゃないよなー、言うのはやめよっ」「だって無駄じゃん、面倒じゃん」
たいていの場合、理性的とか現実性とかの思考が水をさして、かき消していますよね。
それでも、何度もその直感が言ってくる場合、自分の良い/悪いの判断は入れなくてもいいですから、記録してみてください。
良い/悪いの判断入る場合には、ポジティブ・レベル/ネガティブ・レベルを、☆★などで表記すると、後で解析でわかりやすいです。
例
良い場合→ 〇〇について:<ポジティブ・レベル記載>「インスピレーション内容」
悪い場合→:〇〇について:<ネガティブ・レベル記載>「インスピレーション内容」
感覚として消えてしまったら、さらりと流して忘れてしまってかまいません。
記録が残っていますから、後になって、点が線になった場合、「もしかして、これにつながっていた?!」と驚愕、感激することがあります。
そう、そうなのです。
心と体は連携しており、業務実施のための脳の命令系統はそれに影響されていますよね、前回の①「ToDo」のデータと、②③を時系列を合わせて解析すると、より深く現実を可視化することができるのです。
たとえば、問題発生=なにかやらかしてしまった場合、というのは、”それ以前の状態、環境に原因が潜まれる”ので、より深いところにある要因を理解し、歩み寄り、解決する意図をもつこと=”共通の意図”が次なるステップの足固めになるのです。
また、②③を個人で自己解析した結果、部下や周囲への気配りにもつながっていきました。
自分が陥った悪条件=食事が偏ったり、トイレ行ってなかったり、睡眠を極端に減らして全力疾走したなどの配慮のなさが問題発生に起因した、と数値的に理解・自覚すると、周囲への配慮を心掛けるようになった傾向があります。
過去の例ですが、現場での判断ミスが発生した場合、その構成メンバー能力・技術に原因があるのでは?と言う点に焦点を当ててしまいがちですが、それ以前の最低6ヵ月の②③ を分析すると、健康管理が適切でなかったメンバー人数が27%を超えている場合には、思いがけない進捗の遅れが発生しやすく、体の中に緊張が持続したまま、副交感神経が働かず、休まっているはずの時間に身体と心が休まっていないゆえに、遂行能力に無理が生じている/判断力が低下している傾向が顕著にありました。
また、よい例としては、③のインスピレーションの傾向を複数のメンバーで共有したら、困難と思っていた障害がすんなりと解決して、プロジェクト・マネージャーに提案できたという例。
「ツールを使って情報交換すれば、いいじゃない」「そのためにプロジェクト管理ツールを採用しているのですから」という意見もありますが、そこに至るまでに自己分析・否定を繰り返すエンジニアには、まず、③をお勧めしています。
彼らはこう言います「意思表示・発言の頃合いを読み間違えると、雪解けの前に芽をだした植物のように凍えて自滅しますから」
その通り、時期は大切。
でもね、あなたが気が付いたこと、インスピレーションは、水面下で共振している人もいる可能性があるのです、
このままインスピレーションも気づきも水に流し、誰かが共振していることも知らないで、お互いに孤独感を強めていたら、悲しいことです。
これを続けていると、心の病に陥るのですから。
冷えた組織からは、何も生まれない、だから、一人一人、少しずつ少しずつ、対処をていねいに。
コロナ禍の中、様々なご相談が寄せられました、特にテレワーク体制でアウトプットをどう出していいかわからず、「今までの人生、何をやってきたんだろう。この先、何ができるのだろう?」という漠然とした不安をお持ちの方が多かったことは、予想以上でした。
世間でも悲しいニュースがあいついで報道され、今年の6月の標語は、「君 死しにたもうことなかれ ~ 与謝野晶子 ~」でした。
命を大切に、一人一人が”人間性の回復”をするために、必要なことは何か?
「自身がやってきたことを確認することで、自分軸を取り戻す」
記録があれば、自信を取り戻すことが意外に早くできるのです。
反省点も改善点も、忘れていた過去の膨大なインスピレーションから、目標を新たに設定することも可能です。これは、10年以上記録したビッグデータ解析の結論でした。
忘れないでください。
苦しい場合は、目標設定が違う、努力の向きが違う、だけなんです。
人には、自分で未来を創る力を備えています。その種を記憶の中で埋もれずに、是非活かしてほしい。
そして、周囲と細胞が共振するようなインスピレーションが、未来を生み出していくのです。
長い期間、この③心のデータを記録し続けていると、過去に埋もれたインスピレーションが点と点へ、そして線になり、それらが段々と繋がりを広がり始めて、気が付いたら、相当昔の勝手な妄想・空想と思っていた事が現実化していたこともあります。
これは10年、20年記録し続けてきたご褒美のような喜び、「続けていくもんだねぇ~」と感動を覚えることにつながりました。
①「スケジュールToDoリスト」と②ヘルスケア・データ ③心のデータ は是非、必要と感じた時に、始めてみてください。そして、時系列で可視化してみてください。
遡る必要性が発生した時、しみじみ、記録しておいてよかった、と感じることがあるかと思います。ご参考になれば幸いです。
ちなみに、「面倒くさくて、なんのメリットがあるの?」という意見派。
社内だけではく、プロジェクト協業企業の方々にも計画/履歴の日々記載をご協力いただいた1994年からの解析結果、その後「やっておけばよかった」という現実がやってくる確率は、約97%でした。
こちらも、なにかのご参考になれば幸いです。
次回は、「私達が欲しいAI:アンドロイド観音と対話する ”Self AI”」を予定しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
2022/10/05
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石川 恵美
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国内精密制御装置メーカ勤務後、1994年アトリエ イシカワを設立。
専門は、半導体製造装置、検査装置、製造管理システム。
アトリエ イシカワ代表取締役 装置プロデューサー/生産ラインコンサルタント
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